まだまだ未知だけど、ちょっと知ったイエメン人なるもの
（２０００年７月＜２＞）
まず、イエメン人の外見的特徴から。
①背丈はあまり大きくない
②一般に細い人が多い
③肌の色が浅黒い
④天然パーマの頭髪の人が多い
⑤比較的美男美女が多い
これらはいわゆる土着のイエメン人について、私が思う特徴です。｢土着の｣と断ったのは、南の海岸部に行くと、対岸のエチオピア、エリトリア、ソマリア、スーダンからの人々が多いからです。
それから、私はすでに本で読んでいたので驚きはしませんでしたが、それでも違和感を感じるのが、女性の真っ黒黒姿です。女性は、家を出る時には黒のスカーフで頭髪と顔を、全身をアバヤ（もしくはバルト）と呼ばれる黒のあっぱっぱのようなもので覆います。ですから、街で女性を見掛けても、私たちが見えるのは目の部分数センチだけです。それすらもたまに薄い黒布で隠している女性がいます。
そんな状況の中、｢彼女は美人だ｣と通りすがりにイエメン男性は判断できるらしく、その能力に感心すると共に、女性もアイメークに力を入れる訳もここにあるのかしらと邪推するのでした。実際目だけを見せるということは、美人度（正確には美人期待度）がぐーんと高まるのですが、結構あとでがっかりさせられることもあります。イエメン男性はそれを見抜くのでしょうが、もしその観察眼が本物だとしたらすごいことです。
私は同性ゆえにアバヤの下の女性の姿を見る機会が多くあります。それでも、さすがに、初めてイエメン人の家庭に招待された時は、好奇心いっぱいで出掛けました。その場には３姉妹が私たちを迎えてくれたのですが、一番上のお姉さんは２６歳。結婚したばかりで、赤ちゃんもまだ２ヶ月と生まれたばかりでした。２番目の子は病院で働いていて、一番下はまだ学生でした。イエメンでは珍しく、３人とも大学を出ていて、英語も流暢でした（やはり女性の地位は一般的には低いです）。
最初に驚いたことは、イスラム教では、肌を見せることは良くない・慎みに欠けるとされていると読んだ（気がする）のですが、それは男性同席の場合だけのようで、結構胸の開いたノースリーブの格好を見せられ、｢なんだ、私たちと一緒じゃん｣と、当時超初心者だった私は何となく安心したのでした。
旧市街の裏通りで隠し撮り！
前と後ろ、どっちを向いているか、分かりますか？
イエメン人－正確にはイエメン男性ですが－を語る時に、忘れてはならないものが、｢ジャンビア｣と呼ばれる短刀です。平仮名の｢し｣の形をした短刀を、男の人は腰に巻きつけたベルトに差しているのです。このジャンビアは昔はちゃんとした武器だったのかもしれませんが、今は男性らしさを表す飾りのようなものになっています。ジャンビアを差すことが男の証のような。あと、最近は取締りが厳しくなったので、目にすることも減りましたが、以前はこのジャンビアを腰に巻きつけ、肩にはソ連製の銃、カラシニコフを掛けるということが、一人前の格好いい男という感じがありました。
このジャンビアは安いものは数千リヤルで買えるのですが、柄の部分がサイの角でできていたり、部族に代々伝えられている代物ですと、ロンドンなんかで日本円で１億円なんていう値段が付けられているものもあるのです。
さて、このジャンビアを普通の洋服の上に付けているのかと、訝しく思われている方もいるでしょう。答えは当然のことながら否です。民族衣装と呼べるのか分かりませんが、サナアでは大多数の男性が、シャツをそのまま長くしたようなワンピースを着ているか、普通のシャツに腰巻という格好をしています。オバＱのようなそのワンピースはイエメン方言で｢ザンナ｣、標準語で｢サウプ
THAUB｣と呼ばれますが、他の湾岸諸国ではまず白いものにしかお目に掛かれないのに対し、イエメンでは薄紫だとかグレーのものもあります。また、同じ白いザンナでも、イエメンのものはなんだか薄汚れていて、初めてドバイに行った時には、皆のザンナの白の眩さに目が痛く感じられたほどです。ずっとイエメンのものしか知らなかったので、ドバイの方が本来あるべき姿なんだろうなあとその時学んだのでした。
腰巻の布はティハマ地方のものがほとんどで、腰巻スカートが普段着で、上述のザンナはちょっとよそゆき用といった感じでしょうか。探してみると、この腰巻布にも素敵な色合いやデザインのものがあるので、私はそれをスカートに仕立ててもらいました。イエメン男性とおそろいです。へへ。
それから、もう一つ忘れてはならないものが、｢カート｣と呼ばれる葉っぱです。詳しくは別の項で述べますが（こちら）、このカートを噛んでは頬に溜め、しまいにはこぶ取り爺さんのような顔になります。そして、このカートタイムはイエメンにおけるとても大切な社交の場なのです。
ジャンビアは差していないけれど
これもよく見るイエメン男性の姿。
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