イエメン便り

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イエメンの首都「サナア」という街(2000年5月<2>)


サナアの第一印象は「暗い!」でした。飛行機は夜中に到着したのですが、機体はぐんぐん高度を下げているのに、下界にはさっぱり明かりがないのです。「実はタシケントは都会だったんだねえ」と変な関心をしている間に、ほとんど町並みらしきものを見ない内に空港に到着。

空港は立派でもないし、すごくボロボロというほどでもないといったところです(こういったことに関しては、タシケントで鍛えられ、普通の日本人とは感覚が異なってきていると思うので、皆さんが実際に来た時には意外に驚くかもしれません)。

ひとつ驚いたことは、どんな意味があるのかは不明ですが、手荷物、チェックインしていた荷物にかかわらず、税関を通るときに全部チョークで印をつけられるのです。私は和光で買ってもらったばかりのハンドバックを下げていましたので、これを他の人のリュックに隠してもらい、何とか事なきを得ました。しかし、これも高かったクロエのボストンバッグは隠す場所もなく、無残にチョークの印をつけられたのでした。ちくしょー!



世界遺産に登録されているサナアの旧市街を上から望む。
旧市街の写真はこちらをどうぞ。


翌朝、街を車で走ると、街全体が山に囲まれていることに気付きました。その山が緑の山でしたらいいのですが、全部見事な禿山というか岩山で、荒涼たる雰囲気を醸し出しています。しかも、当時は1ヵ月後に統一記念日の10周年という大事業が控えていたので、街のあちこちで、工事、工事、工事・・・。砂埃がすごかったです。たまに道路の砂を掃いている人たちを見かけるのですが、工事のせいだけでなく、あの岩山が存在する限り、サナアのこの砂埃は消えないでしょう。

街の中心街に行くと、大きなスーパーマーケットはありますし、いろいろなお店があります。お買い物事情は別に報告する予定ですが、タシケントの100倍は物が豊富にあるのでびっくりしました。

特筆すべきは交通事情です。タシケントで運転していた私たちとしては、ちょっとやさっとのことでは驚かないつもりでしたが、ここの車の運転技術にはたまげました。道路は普通です。タシケントのようにボコボコというわけではありません。

それなのに、イエメン人は車線を全く無視して、前方だけを見て運転する=好き勝手にジグザグに走るので、車を追い越す時には「隣に私がいるよ」という注意喚起のため、クラクションを鳴らさなくてはなりません。

「前方だけを見て運転する」に関してもうひとつ付け加えますと、中にはバックをする時でさえ、前方しか見ないイエメン人もいるという話を聞きました。結果、当然のごとく後ろの車に追突するわけですが、「後ろを見ているのにぶつけたら、それはわざとということで悪いことだけど、俺は後ろを見ていない。アッラーの意思でぶつかった。だから俺は悪くない」といけしゃあしゃあとのたまうのだそうです。すごい理屈だと感心してしまいました。

ここでよく見かけるのが、銃と野犬です。
銃の数は人口より多いと言われているそうで、そこら辺の警察官や軍の人間は勿論のこと、一般のイエメン人もカラシニコフというロシア製の機関銃を持っていたりします。でも、それは実用としてよりも、立派な大人の証としての意味を持つらしく(一体どんな大人じゃ)、銃での殺傷事件はあまり聞きません。手榴弾もスーク(市場)で1個数ドルで売られているそうです。

それから野犬。
犬好きの私としてはとても悲しいのですが、ここは人相の悪い野犬が本当にたくさんいます。野良犬というよりはまさしく「野犬」。



昼間はどこかで暑さをしのいでいて、夜になると群れを作ってそこかしこを徘徊しています。何割かは狂犬病の犬だそうで、ここでは夜の散歩はできません。困ったことに、幹線道路を外れると、街灯なんていう立派なものはないので、車の中にいても、暗闇の中突然大きな野犬に吠え掛かられると、一瞬ぎょっとします。

そして、どの犬も見事に可愛くない!! イスラム教では犬は汚らわしい動物のひとつで(よだれを垂らすからとか)、人々に邪険に扱われるのが原因かもしれませんね。そして、当然のことながら、道路には犬の轢死体が散見されるのですが、たまに轢死でなく、ただ倒れている犬がいて、我々はひそかに銃の練習台にされたのではと推測しています。



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