マモ、空を飛ぶ！（２００１年３月＜２＞）

タイトルを見て、何のことかといぶかしく思われた方も多いと思います。実は３月５日〜８日と夫の出張にくっついて私もフランクフルトへ行ったのですが、今回はなんとマモも一緒でした。マモにとって初めての飛行機体験です。という訳で上記のタイトルとなりました。

今回のマモの旅行の目的は、避妊手術を受けることでした。人間の勝手でわざわざフランクフルトへ連れて行って手術を受けさせることに対して、呆れられている私たちですが、しかし、マモを飼い始めた時から私たちには飼主としての責任もありますから、それを私たちなりの方法で果たそうと努力しています。

最初に｢なぜイエメンで受けないのか？｣　――　手術の話は聞いたことはありませんが、ここで狂犬病の予防接種を受けた犬猫の話を聞くと、お粗末極まりないものばかり。注射を受けたその日はぐるぐる回ってばかりで、その後１週間寝たきりだった犬とか、注射を受けたその足は３ヶ月間引きずっていた、等など。注射程度でその低落ですから、手術なんてもってのほかと思っていました。

｢なぜフランクフルトで？｣　――　いつか日本へ連れて帰ったらとは考えていましたが、たまたま今回フランクフルト出張の話が持ち上がり、更にドイツは動物が入国する際の検疫が非常に簡単なので、良いチャンスとばかりに動物病院を調べたりして、３泊程度でも大丈夫と分かり、連れて行くことにしました。

ただし、問題だったことはマモの飛行機代です。手荷物扱いにすればそんなに掛からないだろうと高を括っていたら、８００ドルぐらい （１ドル＝￥１１５として約９万２千円）かかるかもしれないと聞いてびっくり仰天です。慌ててフランクフルトと東京のルフトハンザ（航空会社）に電話して照会したところ、それでも５〜６００ドルは掛かりそうと判明。

が、結局は３００ドルちょっと（約３万５千円）で済みましたし、それになんと、マモの航空券まで作成されていました。マモの頭文字を取って、Ｍ／ｘｘｘｘｘ（苗字）.Ｍｒ.と名前入りです。｢本当はＭｒ.じゃないんだけど｣と私がクレームをつけたら、夫曰く｢帰りはどうせどっちでもない性になっているから関係ない｣と。

マモは飛行機の中で２〜３時間おきにケージから出して欲しいとばかりにひとしきり鳴くのですが、その内諦めて静かになる、を繰り返していました。が、往復共に１３時間近く飲まず、食わず、排泄せずで、よく頑張ったと思います。

３月５日の朝９時にフランクフルトに到着し、その日の１３時に動物病院に予約を取ってもらっていました。その前に、今回マモの手配をして下さった私の知人のところへ寄り、彼女とマモとの初のご対面となりましたが、その方は｢私のした行為でマモの運命が変わるかと思うと責任を感じるわ｣とちょっとお悩みの様子。飼主の意思ですからどうぞ気になさらないで下さいね。

動物病院はさすがドイツだけあってきれいだし、様々な設備が整っていました。が、マモにとっては災難なことに、到着して待合室にいる間に犬が３匹もやって来て、長いフライトでぐったりしているマモに更に追い討ちをかけるようにわんわんと吠えるのでした。

手術は１時間も掛からないという説明を担当の獣医さんから受け、更に｢耳にタトゥ（刺青）を入れるか？｣と訊かれたのですが、意味がわからないでいたところ、ドイツではペットが迷子になってもすぐに飼主が判明するように、耳に番号等を記すシステムになっているのだそうです。ほぉーと感心しましたが、イエメンではそんな印を入れたところで、その番号を管理するところがありませんから意味をなさず、｢イエメンではそんなこと無意味です｣と答えたら、獣医さんも笑っていました。

翌日病院へマモの様子を見に行きました。お腹の毛が一部きれいに剃られ、真中に手術の傷がぼこっと残っていました。それでも元気そうだったので安心しました。

マモが入院中に私たちはマモを持ち運ぶためのかごを探しました。フランクフルトに来る時には人から借りた小型犬用のかごだったのです。イエローページで見つけた動物ショップへ行ったら、いろんな動物グッズがあって面白かったです。そこでフランス製だという深緑色の洒落たケージを見つけ、機内に持ち込める大きさかどうかを確認して購入しました。２００マルクなり（約１万１千円）。

３日後のマモの手術跡

ただのイエメンの拾い猫なのに、チケット代＋手術代、そしてマモには不似合いな洒落たケージと、まるで血統書付き猫並みの扱いです。夫と２人で思わず苦笑いをしてしまいました。

３泊４日の予定を無事終えて、家に戻ってきたら、マモはなんと１キロも痩せていました。今回の旅は彼女にとって相当なストレスだったようです。今は手術から１０日以上たって手術跡もうっすらとピンク色になっている程度で、やっぱりドイツでわざわざ受けさせて良かったと思っています。

が、マモは私たちに拾われたばっかりに手術を受け、１４時間の苦行の飛行機の旅をさせられ、犬に混じって慣れない入院なんぞさせられて、果たして彼女は幸せなのかどうかと考えるこの頃でした。