３２歳の誕生日（２００１年３月＜１＞）

３月に３２歳になりました。イエメンに来て約１年経ち、ここにいる人たちのお陰で想像以上に楽しく恵まれた生活を送ることができているので、お礼の意味を込めてパーティーを開くつもりでしたが、いざ誕生日が近づいてみると、面倒臭さが先に立ってしまい、開くかどうか悩んでいました。そんな時に、ホダさんちのはなちゃんという８歳の女の子に、｢私、誕生日プレゼントをもう用意したんだよ｣と言われてしまいました。

更に、｢この子は自分の兄弟や母親の誕生日も覚えていないのに、『あいさんの誕生日はこの日だよね』と何回もカレンダーを指して確認するのよ。少し嫉妬しちゃうわ｣とホダさんも付け加えるのです。これははなちゃんからプレゼントを貰うためにもパーティーを開かなくてはなるまいと、誕生日の２日前に決意し、慌てて招待のための電話を掛けたり、ケーキの準備に取り掛かりました。

当日は子供たちを含めて（と言うより子供たちがメインゲストのようなもの）１７人も集まってくれました。ホダ家の５人兄弟を筆頭に、エチオピア人のマサラットさんと２人の男の子、お手伝いさんのナンシーと孫のカルロ、そしてお友達の愛子さんのいのりちゃん。他にも子供ではありませんが、アラビア語の先生たちとその妹さんも来てくれました。とても賑やかな１日でした。

その人数分をということもさることながら、愛子さんが｢絶対３２本のろうそくを立てよう！｣と言うので、面積の広いケーキを焼きました。ぐるっと３２本ものろうそくがケーキの上に並び、中央には３と２の形をした大きなろうそくが最後の駄目押しの如く立っています。たくさんあるので不安でしたが、無事一気にろうそくを消すことが出来ました（これで私の願い事は叶うはず）。

そしてみんなは、突然の知らせだったにもかかわらず、ちゃんとプレゼントを用意してくれていたのです。はなちゃんが用意してくれていたものは、きっとおばあちゃん（宮古島にいるホダさんのお母さん）から貰って大事にしていたであろう、沖縄人形のキーホルダーでした。ホダ家の上の３人兄弟は共同で、ここサナアの旧市街の目印であるイエメン門の置物とイエメン製のわらで編んだ小物入れ（赤と緑できれい）をプレゼントしてくれました。他の皆さんからも、香りの良いシャンプーとローションのセットやシルバーの指輪＆ネックレスと、一気に物持ちになってしまいました。−蛇足ながら＋イエメン人には怒られるけど−、ここでこんなに物が揃うとは期待していなかったので、とても驚きました。

それから、特筆すべきはお花です。ここは元々とても花が少ない場所で、カーネーションとバラが年間を通じてあるぐらいです。あとはたまに、グラジオラスや変わったお花が売られます。そんな場所で、夫は年齢＋１本のガーベラの花束を買ってきてくれました。｢＋１本｣は早く厄年が終わるようにという願いなんだそうです。案の定、１軒のお店ではそんなにたくさんのガーベラはなく、２軒廻って数を揃えたんだそうです。それから、潤子さんというお友達がやはり年齢の数分のバラの花束を持ってきてくれました（３本ほどカーネーションになっていたのはしょうがないでしょう）。更に、夫の勤務先の運転手さんまでわざわざ豪華な花束を持ってきてくれたのです。サナア中の花が私にプレゼントされたのでは、という程です。

こうして皆さんのお陰で、また一つ忘れられないお誕生日を持つことが出来ました。普通の女性にとって歳を重ねることはあまり嬉しくないことですが、私の場合、−期待しているのではありませんけれど、結果的に−、歳を取ってからの方が素敵な誕生日を迎えさせてもらっているので、誕生日に対してあまり否定的なイメージがありません。夫も、２０代より３０代の方が女性として輝くはずだと言うので、これからも１日１日を、また｢一期一会｣を大切にして過ごして行きたいと思います。