妻の鬱病（２０００年８月＜１＞）

・・・なんてご大層なタイトルをつけましたが、気候は｢過ごしやすい｣筈なのに、いろいろなストレスのせいか、妻は身体の調子を崩してしまいました。本人はストレスを感じるとか溜めている自覚はないのですが、生理が勝手に止まってしまいました。おまけに風邪を引いたりと、７月末は寝込んでしまい、ある日憐れに思った旦那様がフランクフルト行きのチケットを買ってきてくれました。

そして、８月７日〜１０日とひとりで第二の故郷であるフランクフルトに脱出させてもらっていました。おいしいものを毎回食べ、更にばくばくと（あるいはガツガツと言った方が適切か？）旺盛な食欲を示したので、｢本当に具合が悪かったの？｣と行く先々で驚かれました。フランクフルトではちょっと雨の天気のせいもあったのでしょうが、空気の中に水の粒を感じられるほどで、それが却ってすがすがしく、とても気持ちよく街の中を歩いてきました。一応夫の大事な登山靴の注文という重大な任務を持っていたものの、これも夫が考え出してくれた、私が後ろめたさを感じないで済む方便で、その任務は２日目にとっとと終え、残りをのんびりと過ごしてきました。

３ヶ月ぶりの下界でしたが（サナアは高地にある）、空気の濃度の差は殆ど感じませんでした。一番びっくりしたのが、飛行機から降りるなりコンタクトレンズを着けたのですが、レンズをゆすいでいる時に保存液のぬるぬるがすぐになくなったことです。というのも、我々の居住しているのハッダ地区のお水は超軟水とやらで水自体がぬるぬるしていて、石鹸など使おうものならいつまでもぬるぬるして、果たして石鹸は落ちたのかどうか全く分からないのです。それでもいつのまにか慣れてしまいましたが、やはり普通の水で洗うとしゃきっとするのがとても新鮮でした。

そんなこんなの毎日を過ごし、サナアに再び戻ってきた時にはとてもすっきりしていることに気付き、やはり何かしらの｢おり｣は溜まっていたのだなあと思いました。

とても可哀想なのはハビビ（アラビア語で｢マイ･ダーリン｣の意）です。１０日に日帰りフランクフルト出張でした。１０日の午前２時過ぎにサナア発。８時間のフライトで午前９時過ぎにフランクフルトに到着した後、約５時間ぽっちの滞在だけで、午後２時にフランクフルト発サナアへ。同日午後１１時半にサナア着。その５時間の滞在の間に、街中のカフェで朝食を取り、久しぶりに半熟の目玉焼きを食べたことが、彼の今回の唯一の嬉しかった出来事という、とても悲惨な出張でした。相変わらず、妻はおいしい思いをして、夫はその分ワリを食うという夫婦ぶりです。